〇冠詞なぜは日本人にとって難しいの?
冠詞が難しいとされる理由は、まず日本語に冠詞自体が存在しないことが大きな理由です 。そのため、英語の冠詞が示す特定性や情報の共有という概念自体が、私達日本語を母国語とする日本人には、それぞれのルールを全て暗記したとしても感覚的な使い分けが身に付きにくいです。また、theを「その」と単純に訳す一般的な指導が、逆に誤解を招くことが多々あります
。
例: 緊急時にCall the police! (警察を呼んで!) では「その警察」という意味で使われていません。この文脈では、警察という機関が、話し手と聞き手の間に常識として認知されているので、theが使われています。この例のように、文脈や状況によって
the が持つ意味合いは、日本語の持つ「その」だけでは捉えきるのがとても難しいため、冠詞を日本語の意味に訳すことに固執しすぎると本質的な理解からだいぶ離れてしまいます。
〇日本語と英語の違い
ここで日本語と比較してみましょう。まず前提として、日本語は文脈に依存して、英語ははっきりとした情報共有を求めるという違いがあります。
日本語は、は(主題)が(新情報)といった助詞を使い、文脈から情報の特定を示す傾向があります。
例: 「猫がいる」とは「新しく猫という情報が登場した」ことを示します。英語でいう、There is a cat. に近いニュアンスとイメージしてください。
その一方で、「猫はかわいい」とは「猫という主題について話す」ことを示しています。英語の、Cats are cute. (総称)に近いニュアンスを持っています。
しかし、この似ている点は部分的なので日本語で考えるのではなくて、この違いを認識し、英語の冠詞の役割を独立したものとして改めて捉えることが冠詞の習得には大切です。
〇よくある間違い
よくありがちな間違いとしては、まず不定冠詞 (a/an) のつけ忘れです。日本語では1つを明確にしないことが多いので、単数可算名詞にaもしくはanをつける習慣が身に付きにくいとされています。aはoneの略であるため、単数可算名詞には必ずPART1で述べた輪郭と一つという情報を付け加える必要があるという認識を持つことが大切です。
次には、定冠詞 the のつけすぎです 。これは、the を特定と捉えすぎてしまうことに由来します。
例: I love the music.では、特定の音楽を指す場合は正しいですが、音楽全般が好きという事実を述べる場合は I like music.のように冠詞なし(無冠詞)で表現するのが自然です。これは、PART1で説明した輪郭がない集合的な概念には無冠詞を用いるというルールに当てはまります。
2度目の登場にはtheを使うというルールにも限界があります。I have a dog. The dog is cute.のような典型的はパターンでは有効ですが
、The Sun is shining.のように、初めて出てきた名詞でも the を使うケースもあります。これは、文脈的共有だけではなく、常識的共有(太陽や月など唯一無二の存在
)や場面的共有(目の前にある建物など)によって特定されるというルールもあるからです。
また、I'm looking for a doctor. His name is Dr. Ito.では、話し手はDr. Itoという特定のドクターを探していますが、聞き手にとってはまだ知らない情報なので、a
doctorという不定冠詞が使われています。話し手の特定性だけでなく、聞き手が対象を特定可能かということも冠詞を使う上で大切なポイントです。
〇冠詞のルール及び例外(定冠詞、不定冠詞、無冠詞の具体的なポイント)
不定冠詞a/anの詳細な用法
不定冠詞は、不特定の単数可算名詞に使われます。
・単数可算名詞: a/an は one の略であるため、必ず単数形につきます 。a dogs は誤りです 。
・発音による使い分け:a は子音で始まる名詞の前、an は母音(a, e, i, o, u)で始まる名詞の前につきます 。この使い分けは、文字ではなく発音によって決まるのが大切です。
例: an hour はスペルがhで始まりますが、発音が母音のためanが用いられます。逆に、a university はスペルがuで始まりますが、発音が子音のためaになります。
・総称的用法:A cat is a domestic animal. のように、ある種の代表という意味で使うこともあります。
定冠詞theの詳細な用法
theは、話し手と聞き手が特定の対象を共有している場合に使われます。
・文脈からの特定:一度会話に登場した名詞、または先行情報で既に特定されている名詞。
・状況からの特定:話し手と聞き手が同じ場所にいることで、対象が一つに絞られる名詞 。例: Open the curtain. (目の前のカーテンを開けて)
・常識からの特定: 世間一般の常識として一つに決まるもの 。例: the Sun、the Moon、the Earth
また、特定の固有名詞や慣用句にもtheが使われます。
・特定の国、地域、地理的名称: the United Kingdom、the Nile、the Rockies
・楽器:play the violin、play the piano これは楽器そのものではなく、楽器を演奏するという概念的な行為を指すためです。
・形容詞の最上級: the cutest dog 最上級は、一番という唯一無二のものを指すため、特定された名詞として扱われます。
・その他: the first、the same、the onlyなど。
語順の例外として、all the people、such a thing、half an hour のように、all, such, half
などが a/the の前に来る場合もあります 。
冠詞をつけない無冠詞の用法
無冠詞は、名詞の輪郭を外したイメージで、特定の対象を指さない場合に使われます。
一般論・総称
・可算名詞の複数形: I like dogs. (特定の犬ではなく、犬全般が好き)
・不可算名詞:I love tea. (紅茶という飲み物が好き)
固有名詞
・国名や人名: I lived in Toyohashi, Japan.
・曜日、月: I was born in January.
・惑星:Mars、Earth( the Earthとも言えます。Earthのみだと惑星名で地球という特定の天体そのもので、the Earthは特定の対象に使われるので、私達が住む世界である地球といったニュアンスです)
概念的な場所や行為
・go to school(勉強しに行く)と go to the school(学校の建物に行く)は意味が異なります 。
・be in hospital(入院している)と be in the hospital(病院の建物の中にいる)も同様に意味が異なります 。
・食事の概念には冠詞はつきません: eat breakfast、have dinnerなど。
・by + 交通手段: by bicycle、by car 、by trainなど。
