半年ほど前の6月、私は自然の中でのリフレッシュを目的に福井県の熊川宿へ行きました。その時に感じたのは、異文化間のコミュニケーションにおける言葉のニュアンスの大切さです。
宿泊した施設は、犬連れOKな新設の宿でした。チェックアウトの際、今後の参考にしたいという意向からスタッフの一人から口頭で15分ほどのアンケートをお願いされました。スタッフの方は、日本語が堪能なアメリカ人でした。
アンケートが終わり、お礼として冷蔵庫のドリンクを一ついただけることになりました。一連の流れが終わった後、スタッフの方の言葉が印象に残っています。
「ドリンクをセルフで取って、もう帰ってください。」
この「もう帰ってください。」という一言は、一瞬冷たい印象を受けましたが、すぐにこの一言は英語のOff you go. を直訳したものだろうと思い至りました。
Off you go. には、単なる「行ってください。」という意味だけでなく、「さあ、元気に行ってらっしゃい!」と、相手の出発を促して応援するような、温かい気遣いのニュアンスが込められることがあります。
きっとスタッフの方は、その深い配慮を込めたつもりだったと思います。しかし、そのベースにある「行ってください。」という基本的な意味だけが日本語として伝わってしまったことで、本来の相手への配慮というニュアンスが薄れてしまったのだと感じる出来事でした。
今回は英語を母国語とする方が日本語を話す上でのニュアンスの違いでしたが、これはもちろん逆の立場でも言えることです。日本語で込めた思いが、英語に訳された途端、そのニュアンスや相手への響き方がまるで違ってしまうケースは多々あります。
正確なコミュニケーションとは、単に言葉の意味を伝えることではなく、その言葉の背後にある文化や、相手への配慮といったニュアンスを全て理解することだと、この出来事を通じて改めて考えさせられました。
